トレードbotを作る前に、紙の上で30日測る理由と測り方
先に断っておく。この記事は「このやり方で勝てる」という話ではないし、売買のシグナルや推奨銘柄を配るものでもない。ここで書くのは、値動きに合わせて自動で注文を出す仕組みを作る「過程」の話と、それを本番で動かす前にどうやって確かめたか、という話だけだ。個別の売買の判断は、読んだ人がそれぞれ自分の責任で行うことで、その判断をこちらが肩代わりすることはできない。
この記事で書かないこと
先に、書かないことをはっきりさせておく。どの銘柄が上がるか下がるかの予想はしない。売買のタイミングを知らせるシグナルは配らない。「この仕組みで年利何%」といった実績も、まだ動かしていない段階では出しようがないし、動かした後も誇張して見せるつもりはない。ここで扱うのは、あくまで仕組みを作って確かめる手順の話であって、投資の助言ではない。
いきなり本番のお金を動かさない
自動で売買する仕組みを思いついたとき、一番やってはいけないのは、思いついたその日にお金を入れて動かすことだと思っている。理由は、仕組みが「たまたま」うまくいったのか、それとも実際に手数料や税金を引いた後でも成り立つ形なのかが、動かしてみるまで区別できないからだ。
なので最初の段階では、実際のお金は一切動かさず、表計算ソフトの上で注文が出たつもりで記録するだけにしている。ここでは「紙の上で測る」と呼んでいるが、実際に紙とペンを使うわけではない。呼び方の問題より、お金を動かさずに検証する期間を必ず挟む、という順番のほうが大事だ。
正直、この段階は地味で、早く実際のお金で試したくなる。仕組みを作っている最中は「たぶんうまくいく」という気持ちのほうが強くなりがちで、その気持ちのまま入金すると、良くない結果が出たときに「まだ様子を見よう」と判断が甘くなる。お金を入れる前に紙の上で結果を見ておくと、後から冷静に判断しやすくなる、というのが、この順番にした理由だ。
30日という期間を選んだ理由
期間を30日にしたのは、短すぎると偶然のいい結果に引っ張られるからだ。数日だけ見て「勝っている」と判断すると、その数日がたまたま相場の状況に恵まれていただけ、ということが起こる。かといって長すぎると、確認するだけで何ヶ月も動けなくなる。30日という長さは、平日・週末・相場が動く日と動かない日がひと通り混ざる期間として選んだ、こちらで決めた目安の数字であって、これより短くても長くても構わない、という前提で読んでほしい。仕組みの種類によっては、60日や90日で見たほうが向いている場合もあるはずで、30日はあくまでこの実験での出発点として選んだ数字だ。
何を測るか
紙の上で測るときに、見た目の損益だけを見ると判断を誤る。最低でも次の項目を合わせて記録している。
- 手数料を引いた後の損益(手数料がプラスに働く仕組みかマイナスに働く仕組みかで、必要な勝率がまったく変わる)
- 税金を差し引いた後の手取り(利益が出ていても、税金分を引いたら赤字ということもある)
- 注文を出そうとしたのに約定しなかった時間がどれくらいあったか(紙の上の記録は、実際の相場では約定しない前提を見落としがちになる)
- 一番大きく数字が落ち込んだ時に、どれくらいの含み損を抱えた計算になるか
この4つを30日分並べて、それでも手数料と税金を引いた後にプラスが残るかどうかを見る。プラスが残らなければ、その時点で仕組みそのものを見直すか、諦める。
記録の付け方は難しいものではない。日付、注文の種類、想定の約定価格、手数料、その時点の損益を1行ずつ表計算ソフトに並べていくだけだ。大事なのは細かい分析より、30日分を毎日欠かさず記録する続け方のほうだと感じている。1日抜けると、その日の相場の傾向が丸ごと抜け落ちて、あとで見直したときに全体の印象が変わってしまうことがある。
何が起きたら見直すと判断するか
「プラスが残らなければ見直す」と書いたが、もう少し具体的にしておく。30日分を通して手数料・税金を引いた後の合計がマイナスなら、まず仕組みそのもの(注文を出す条件)を疑う。合計はプラスでも、一番大きく落ち込んだときの含み損の計算が、あらかじめ決めておいた許容範囲を超えていた場合も、条件を見直す対象にしている。合計の数字だけを見て「プラスだからOK」と判断すると、たまたま良い結果だった日に引っ張られて、実際には振れ幅の大きい仕組みを見過ごしてしまう。
紙の上の結果がプラスでも、そのまま全力では動かさない
紙の上で良い結果が出たとしても、次にやるのはいきなり普段使う金額を入れることではない。まず、失ってもいいと言える小さな金額から始める。そして、その金額の一定の割合を失った時点で、理由を問わず自動で止まるようにしておく。仕組みが正しいはずだから、と例外を作らないことが大事だと考えている。
この実験の位置づけ
ここまで書いておいてなんだが、この手の仕組みで得られる利益は、正直なところ大きくは期待していない。手数料の仕組み次第でわずかにプラスになる余地がある、という程度のものだ。それでもこの記事に書く理由は、無人で回る仕組みを作って、紙の上で確かめて、それでも思ったようにいかないことがある、という過程そのものを記録に残す価値があると思っているからだ。うまくいった話だけを見せるより、こういう地味な検証の積み重ねのほうが、あとから読み返したときに役に立つ。
紙の上の30日を終えた段階の結果はまだ無い。数字が出た段階で、この記事に追記する形で公開するつもりでいる。増えた減ったの数字は、動かしてみるまでは書けないので、今の時点では未計測としておく。30日を終えて、たとえ結果がマイナスだったとしても、その結果ごとここに書く。都合の悪い数字だけを隠して良い部分だけ見せるのは、この記録の趣旨に合わない。